注射器の連続使用で感染?知っておきたいb型肝炎の話

b型肝炎は、かつて日本で大きな社会問題になり、今もなお世界中に多くの感染者が存在する病気です。b型肝炎という病名は多くの人が知っていますが、病気の具体的な実情について詳しく知っている人はあまり多くありません。

今回は、b型肝炎についての基礎知識や具体的な対策、日本においてb型肝炎が問題化してきた歴史について解説します。


b型肝炎ってどんな病気?

b型肝炎は、HBV(b型肝炎ウイルス)を病原体とする肝臓の病気です。WHOの推計によると、現在およそ3億5000万人の感染者が世界に存在し、とくにアジアやアフリカの一部地域では人口の8%前後が感染しています。

急性b型肝炎の症状としては倦怠感や疲労感、食欲減退、嘔吐などがあり、感染から約90日で発症します。これらの症状が出た場合はすぐに入院して安静治療を行わなければなりません。また、肝臓への負荷を避けるため、タバコやアルコール、脂肪分の多い食事は控える必要があります。

慢性のb型肝炎の場合は、急性のような目立つ症状は現れません。感染者の中には、自分がHBVウイルスを持っていることに気づくことなく一生を終える人もいます。ただし、慢性のb型肝炎に感染している場合、肝硬変や肝臓がんなど将来的な病気のリスクが高くなることには注意が必要です。

慢性b型肝炎を完治させる治療法は現在開発途中ですが、実用化には至っていません。とはいえ、肝臓へのダメージを抑える治療法については研究が進んでいるため、悪化を回避する方法は確立されていますし、将来的には慢性b型肝炎を完治する方法が見つかる可能性もあります。

どうやって感染するの?

b型肝炎の感染経路には、注射針などによる血液感染と、性交渉による感染の2通りが存在します。血液感染は、注射針やカミソリ、歯ブラシなどを通じてHBVを持った人の血液が体内に入ることで起こる感染です。また、HBVを持った妊婦から胎児へ感染するも場合もあります。

日本におけるb型肝炎の歴史

日本においてb型肝炎が流行したのは、1950年代から80年代にかけての約30年間でした。HBVの拡大は世界的な問題となっており、注射針の連続使用などによる血液感染の危険性についてはWHOも各国に対策を呼びかけていました。

日本でも政府が各自治体に注意喚起していましたが、これが周知徹底されなかったことでb型肝炎が流行することになります。とくに大きな問題となったのは、予防接種における注射針の使い回しでした。HBVを持った人の血液が注射針によって拡散されたことで、ウイルスが爆発的に広まったのです。

日本では、b型肝炎患者が国を相手取って訴訟を起こし、裁判闘争が繰り広げられてきました。発端は1989年にb型肝炎患者が札幌地裁に提訴し、国の謝罪と賠償を求めた訴訟です。原告は、b型肝炎の流行は集団予防接種等によるHBV感染を防げなかった国に責任があると主張しており、この裁判は日本におけるb型肝炎の問題を代表する事件として社会的な注目を集めました。

2006年に最高裁が国の責任を認めて賠償を命じる判決を出し、訴訟はいったん決着しました。しかし国は、当時原告だった5人以外の患者に対しては賠償をする姿勢を見せませんでした。この態度に怒った全国の患者が立ち上がり、各地でふたたび訴訟を起こします。

結局、2010年に札幌地裁が和解勧告を出し、これにもとづいて原告団と国との間で基本合意が結ばれました。基本合意には、国が責任を認めて公式に謝罪すること、集団予防接種等による感染者に補償を行うこと、HBV拡大の原因究明に取り組むこと、患者への不当な偏見・差別をなくすための啓発活動に取り組むことなどが盛り込まれています。

b型肝炎特措法

2012年に成立した特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法(以下、特措法)では、上記の合意にもとづいて患者への補償を進めることが定められています。具体的には、集団予防接種を原因とするHBVウイルスへの感染が証明された患者に対して、簡素な裁判手続きのもとで国が賠償金を支払うというものです。

特措法には期限が定められており、施行から10年後の2022年まではこの制度のもとでの補償が認められます。特措法による給付金について注意する必要があるのは、給付金の対象者は集団予防接種を原因としてb型肝炎に感染した人に限定されているということです。参考情報…B型肝炎 給付金 > アディーレ法律事務所

輸血や母子感染でb型肝炎にかかった人には、この制度は適用されません。

感染経路や詳しい症状については病院などで検査を受ければわかるので、心当たりのある人は近くの医療機関に相談するとよいでしょう。また、給付金支払いの手続きは患者本人が訴訟を起こし、裁判における和解を受けて国から給付金が支給されるというものです。

あくまで自ら手続きを始めなければ、仮に制度の対象になっていても給付金を受け取ることはできません。実際、制度の対象となる患者は全国に45万人ほどいると推計されていますが、現時点で訴訟手続きをとっている人は1万5000人ほどです。

弁護士費用などは大部分を国が負担することになっており、個人の負担は小さいので、損をしないようによく制度を確認しておきましょう。

→b型肝炎のガイドラインとその概要

b型肝炎について気をつけたいこと

b型肝炎は大きな病気につながりかねない非常に危険なものですが、正しく対策をすることでリスクを軽減できます。まずは、注射針や歯ブラシ、カミソリ等の使い回しをしないことや、血液が付着したものは必ず石鹸で洗って清潔にすることが重要です。

また、性交渉の際にはコンドームを着用し、パートナーからの感染を防ぐようにしましょう。性交渉によってHBVを受け取ると、別のパートナーとの性交渉でウイルスを拡散させてしまう(ピンポン感染)の危険性があります。

これを防ぐために、必ずパートナーと一緒に検査を受けておくようにしましょう。HBVが蔓延している地域へ旅行や出張で行く場合にも注意が必要です。ウイルスの蔓延については事前に情報を調べ、予防接種を受けておくようにしましょう。

予防接種を受けることによって、感染のリスクは大幅に軽減することができます。万が一b型肝炎に感染してしまっても、慌てることはありません。慢性の場合、きちんと対策すれば症状が出ずに健康のまま過ごせる可能性も高いです。

食事や日常生活について医師の指示に従い、ウイルスを悪化させないようにしましょう。また、周囲の人がb型肝炎に感染していることがわかったときも落ち着いて対応できるよう、しっかりと知識をつけておきたいところです。